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今年の「森から住宅を考える2004」では、もっと身近に国産材に触れることをテーマにしたいと考えた。そこで出てきたのが「縁台」。この縁台を造るにあたっては、日本各地の生産地から、特徴ある材を色々と集めてきた方が、より広く国産材への理解が深まると考えた。

++ 縁台サミット対談◆末武純子×鈴木喜一 ++
                                    写真=畑 耕

東京神楽坂のアユミギャラリーで毎年開催されている企画展「森から住宅を考える」も今年で四回目を迎えた。今年は「今こそ国産材を活かそう」というテーマを設定し、国産材を使う意味を改めてみんなで考えてみようという内容だった。 各林産地の縁台が都会の真ん中に集合し、夜な夜な「縁台サミット」。訪れた一般の人たちも「懐かしいなあ」というような面持ちだったし、子供たちもはしゃいでいた。縁台に腰かけながら、みんな思い思いに日本の森を想像していたのではないだろうか。

鈴木「縁台サミット」とはユニークなアイデアでしたね。
末武山・ユーザー・つくり手という今までの構図に対し、第四番目の何かを登場させて語らせてみようという企画でした。つまり「縁台」に語らせることです。住宅という枠を超えて国産材のことを考え、もっと身近な経験をまちに持ち込んでみようと。
鈴木身近なところから地道に国産材をアプローチしていこうという姿勢でしたよね。縁台は建築塾の塾生をはじめ、アユミギャラリーのファンや地元神楽坂の人にもずいぶん買って頂きました。木材の出所のわかった縁台を使っての夕涼みは、格別なんじゃないかな。
末武販売は、入札、産地還元方式ということでずいぶん盛り上がりましたよね。
鈴木ぼくも杉の端材を利用してつくった縁台を買いました。山長商店さんの杉材でつくったものですけど。なんだかうれしくてよく愛用しています。中村伸吾さん(建築家・神楽坂建築塾第二期生)の設計だから余計にそう感じるのかな

末武今回は基本形縁台の他にオリジナルデザインも混じっていましたが、それが彩りを添えていましたね。また、端材や既製寸法材の有効利用とか、産地の産業に繋がればより魅力的だと思います。神楽坂建築塾の塾生の方々には組み立てワークショップでも参加いただきましたし、中庭では樹種当てクイズもやっていましたね。
鈴木そうそう。楽しかったですね。
末武縁台の里親となってくれた人たちからは、素材感、つくりの良し悪し、デザインについて様々な反応や意見をいただきました。時間の過ごし方や、日常の道具としての手入れの事まで考えさせてくれる縁台ですが、まずは「形となった、役に立つもの」として、見る人に訴えたようです。 ともかく日常の中で腰掛けてみる。すると木との対話がそこから始まる。とてもよい機会になったのではないでしょうか。
鈴木縁台を担いで、、畑耕さんと写真撮影というか神楽坂ロケをしたんだけど、みんな「懐かしいなあ」というような面持ちでしたし、子供たちはとてもはしゃいでいた。
末武それぞれご自分のお店の前に座ってもらったり、境内にお邪魔したり。神楽坂に似合う情景でしたし、同時にまちへの呼びかけもできました。

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++ 森から住宅を考える時に ++

末武今回、縁台たちは国産材との体験をもたらす仲介役となり、今は各家やまちに飛び出して行ったということになりますね。
鈴木神楽坂に「まち飛びフェスタ」というのがあってね、毎年秋に実施されるんですけど、それに先がけて縁台たちは飛び出して行った。実はこの夏、中庭で縁台夕涼みコンサートとか考えているのですよ。ギターとか三線でね。みなさん浴衣かなんかで来てくれると楽しいですね。国産材縁台も喜ぶんじゃないかな。森と縁台の詩でも書こうかな。



末武それはいいですね。コンサートや詩から「森を考える」人もいるかもしれませんね。 ところでこの様なアプローチを考えるとき、似た例として、有機野菜などの食品のことを連想するのです。20年以上前は虫食いが多いとか高価だとかクレームが多かったそうですが、商品づくり、購買者の班体制づくりなどを通じた活動は今は市民権を得て、消費者には生産者の都合も考えるサポーターとしての意識も定着しているように見えます。安全性は益々求められるし、さらに何よりもおいしいということが、「多少高価でも良いものしかいらない」という層を支えているのではないのでしょうか。
鈴木確かにそうですよね。僕の建主さんで、最近セルフビルドに近い形で板倉の家を建てた人がいるんですよ。茨城で農業を営む若い夫婦なんですけどね。そういう自然な野菜を作っているんです。僕も時々そこから送られてくる野菜や果物を食べていますがおいしいですね。
末武そうですか。国産材についても、良いものを志向するというベクトルを信じてよいならば希望ももてるし、逆にそれならば悪いところをしっかり認識しなければ怖いということも言えますね。 農業をめぐる動きでは、つくり手としての存在意義への危機感が原動力のひとつになっていたと思います。経済的な尺度ではなく、農家として何をつくり提供するのかという。食文化がなおざりになり、つくり手の存在意義が怪しく感じられると同時に消費者も不安になりました。

スケッチ=末武純子

鈴木その辺の反応は敏感ですよね。つくり手の顔が見えると安心するというのはその一例だと思います。いつ、どこで、どのようにつくられたのか、大切なことですからね。話は縁台に戻りますが、各縁台に日本地図のマークがついていましたね。
末武ええ、そうなんです。縁台の材がどこから来たか判るように、日本地図と出所を示す印をつけました。これにみなさんの記憶に残ってくれるように、との願いも込めています。そんな産地とのつながりに加え、良質で「おいしい」ということも、今回の縁台たちに求めたことです。これは各林産地、デザイン側、そして大工さんたちの協力があってできあがりました。
こんな地道な活動の一方、国産材の大量安定供給という目標は国の政策上にもあるし、民間でも取り組みの渦中です。その時、大量消費、供給の必要性を満たす半面、いろいろなアプローチの中で何が「良質」なのかを常に考えていかなければならないと思うのです。



鈴木良質で「おいしい」っていうのは住宅設計でも同じですね。住宅に限らずビルだってそうですよね。国産材がもっとオフィス空間の中にもやわらかく浸透していけばいいですね。かなり長い時間を過ごしている空間ですから。
末武そうですね、ビル空間では異質で面白いものとしてのアプローチもあると思います。つくり手としては納得いく素材を上手に活かすということでしょうか。デザインは相当な役目を果たすと思います。また、その製品を使うことで産地と繋がり、持続可能な営みに関与しているという感覚をユーザーにもたらす手立てになりますね。宮崎県諸塚村からは、地元で考えてあったデザインのベンチが届きました。諸塚村の行う産地住宅と同じ考え方ですが、買われていったこのベンチを今後もフォローし、それを地元の製作者である大工さんの励みにしたいそうです。
鈴木あの折りたたみ式テーブルの仕掛けにはびっくりしたな。諸塚村は林業立村を宣言してますよね。シイタケもおいしかったし、みなさん、ますますがんばってるって感じだなあ。
末武そして外に対してオープンですよね。他にも、今回はご参加願えなかったけれど、盛んな発信をしている産地がいくつもあります。私たち、まち側からも積極的に交流したいですね。


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++ ジャンルも超えてひろくかわる ++

末武ところで縁台たちは、アートやまちづくりにまで多方面で活躍しているんですよ。
鈴木たのもしいなあ。
末武なかでも、アサヒ・アート・フェスティバル(以下AAF)実行委員会とAAF深川アートセンターの主催した「縁台ワークショップ」等を行っている縁台作家・荒野さんの協力は今回の縁台サミットのきっかけなのです。
鈴木荒野真司さん?そう言えば一昨年、吾妻橋のアート・ビアガーデンでお会いしましたね。縁台を作って、場を創る。コミュニケーションツールとしての縁台、それが延いてはまちの風景をつくる、と、おっしゃっていましたね。
末武それはもう市民が参加するとすごいパワーになっているようです。そしてその活動はAAFの志向するプロセス重視、フィールドワークを基にした創造や「未来・市民・地域」とおう理念にも呼応して、森と川下を繋ぐという動きも見せています。このように森を考える動きがジャンルを超えて見られます。そして異分野の活動が今回の「森から住宅を考える」展にも影響を与えています。
鈴木そういう背景があったんですね。神楽坂でのこの森の企画も年々回を重ねるごとに、緊密なつながりが生まれているように思えます。ぜひ継続してやっていきたい企画ですね。
末武そうですね。悩みながらも関係者で知恵を出し合ってきました。産地と対話し製作過程を見つめ、まちの参加・交流からのフィードバックという基本的なことを、ささやかにも実現していきたかったのです。
                                         (文責=末武純子)
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++ 「縁台」から拡がった国産材産地のネットワーク ++

今年の「森から住宅を考える2004」では、もっと身近に国産材に触れることをテーマにしたいと考えた。そこで出てきたのが「縁台」。この縁台を造るにあたっては、日本各地の生産地から、特徴のある材を色々と集めてきた方が、より広く国産材への理解が深まると考えた。
しかし、私達が知っている生産地は数が知れている。そこで各産地に縁台のための木材提供をお願いする“営業”を始めることにした。まずは「初めまして」の挨拶から、国産材を広める運動をしているという話、そして今度行うイベントや後援会のお知らせをして、国産材について話し合いをしましょうと呼びかけた。
実際の反応は様々だった。しかし今回、全国の産地の方に自分たちの主旨や思いを告げることで、今後何をしないといけないのかがわかった気がする。また「縁台サミット」では、各産地の方にも参加していただくことができ、川上(産地)の人と川下の人(一般の参加者)との話し合いがもてたこともさながら、今年は川上の人同士も話をすることができた。またその後も産地間同士で情報交換などの動きもあり、今年の大きな成果のひとつである。
                                    (千葉弘幸/千葉工務店)


アサヒ・アート・フェスティバル /商店街での「縁台ワークショップ2004」の様子。
右写真右:縁台作家、荒野真司
           (写真=末武純子提供)

 

   
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