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毎年6月に、東京・神楽坂アユミギャラリーで行われる企画展「森から住宅を考える」が今年も開催され、今年で3年目を向かえた。
主催メンバーは主に林業家・工務店・設計者からなるグループで、家づくりと森との歩みについて考え、山と町を結ぶネットワークとともに、神楽坂に様々な「森」が出現し、来場者一同を驚かせた。

++ 欅遊庵3号・樹上の家について ++
                                       鈴木喜一

ここ3年、企画展「森から住宅を考える」の一環として、アユミギャラリーの庭に小さな庵を建てて遊んでいる。夏季限定の仮設物である。必ず欅の木を囲ってつくるので「欅遊庵(きょゆうあん)」と命名した。最初の1号は方丈の庵ということでシンプルな正方形高床式(後日、八ヶ岳に移設)、2号目はインドネシアの樽型住居をイメージした八角形高床で空に向かって壁体が開いているというもので、とても居心地が良かったことを覚えている。

今年の3号は縁あってジャパンツリーハウスネットワークの小林崇さんと知り合い、樹上睡眠の世界をつくろうと、三角形の小屋を焼く2メートル地上から浮遊させた。まだこの小屋で眠ってはいないのだが、そろそろ蚊取り線香を持ち込んで、スポンサーのロフティさんからいただいた快眠枕で、一晩ぐっすり睡眠実験をするつもりである。きっと少年の日の記憶が蘇ってくるだろう。

この小屋を建てるイベントはそもそも「森と家」の関係を考えてみようという趣旨のもとに始まった。
ここしばらく、日本全土の森を訪ね歩く旅をしているのだが、実際に行ってみると、日本の森は外材に押されて危機的な状況にあり、深刻な問題をたくさん抱えていることがわかってくる。

そこで、まずは木を見て触り、その木の下で遊ぶ楽しさを体感することから森に対する理解を深めていこうと思った。これからの住まいが目指す方向性とは?自然と一体になる魅力とは?日本の森の再生につながる生産システムとは?さらには地球環境の保全ということまでも視野に入れて、みんなで一緒に考えて見たかったのである。

山とまちをもっと密接につなげて、まちの中の自然を見直してみたい。そんな基地としての役割を欅遊庵の中には秘かに込めているつもりである。

今年の欅遊庵は地上から持ち上げたせいか、道行く人の反応はすこぶる高い。子供たちは必ず上に登ってはしゃいでいるし、夜になれば、どこからともなく近所の人たちや仲間達が集まり木の下で酒宴が始まる。森と建築の再生という深いテーマも、そんな中で折に触れて語られ、新しい住まいのかたちが様々な視点から模索されていくように感じるのだ。

スケッチ=鈴木喜一

この欅遊庵3号は03年9月30日まで建っている予定である。本格的な秋になって欅の葉が色づく頃になれば、アユミギャラリーの庭はまた元通りの何もない状態になる。人の賑わいもめっきり少なくなるだろう。だが、僕はそのちょっと寂しげな風景も実は好きなのである。
                                     すずき・きいち / 建築家

神楽坂の小さな庭に
欅遊庵3号というツリーハウスが現れた
     今年で3基目
     地上から2mほど宙に浮いている
誰もが少年の頃に夢見た
小さな小杉の木の窓と戸を閉めると
密やかな異次元空間
     ランタンやロウソクの灯の中で
     しばし風の歌を聴いていよう

                   鈴木 喜一

 

     欅遊庵3号・ツリーハウス
       (スケッチ=鈴木喜一)
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++ 木の舞台 ++
                                       末武純子

ここを教室とする神楽坂建築塾の坐学が行われた翌朝に設置を開始し、午後の企画展ギャラリートーク直前に完成させた。

これは「森から住宅を考える2003」企画展に伴うギャラリートークのために改装されたビルの一室である。
森から住宅を考えるネットワークグループが現場で組み立てを終えたとき「オレたち大道具の仕事ができるなあ」という声が上がった。

大道具の仕事として、今回有利だったのは、
1. 前もって準備することをプレカット
  で合理的に行った。
  ・プレカットの継手仕口で軸組を作っ
  ている。
  ・ビス穴などの損傷がない。
  ・他に移動させ再利用できる。
この、釘やビスを使っていないことは舞台美術の大道具との違いだと想像するが、もうひとつ大きな違いがあるそれは、
2. 原材料の産地が明確であること。
実はこれらは、仮設物としてだけでなく、巷のリノベーションの手法にも一考を投じることだと思われる。
                拡大Click)


既存の建物をより活かすためのリノベーションにおいて、施工の仕方(合理性、木を活かした接合構法の利用)、また都市の代謝が実際の物流でも意識の中でも、産地と直接繋がりうるということは、今見落とされているのではないか。また、床とあと少しの部分に木を加えることでの雰囲気や室内環境の効果的変化はもちろん特筆すべきことである。
というわけで、我ら大道具キャラバンは、ネットワークを活かした原材料、加工製品、設計、プレカット、施工の連携プレイのもと、どんどん出動したいと考えている。

                                               末武純子

建物名--木の舞台・森から住宅を考える会場
         所在--新宿区矢来町・高橋ビル内
設計・施工--FH+森から住宅を考えるネットワークグループ
          ・基本設計/末武純子 ・ディレクション/鈴木喜一
          ・実施設計/千葉弘幸・高橋正成 ・軸組材(杉・桧)、
           プレカット/山長商店
          ・床材(杉・唐松)杉集成材ルーバー、ボード/くりこま杉協同組合
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++ き(木・樹・期)は熟した〜民家型構法の家づくり20年 ++
                        ギャラリートーク6月15日より

パネリスト:
  平良敬一(建築思潮研究所)×戸塚元雄(木と家の会)×中村伸吾
  (中村伸吾建築設計室)×榎本淳一(山長商店)×高橋正成(高棟建設)
                (※6月15日(日)ギャラリートークより内容を抜粋)

増沢洵さんの「最小限住居」、白井晟一さんの「試作小住宅」等その時代にできた小住宅は、既存の生産システムのなかで、洗練した最小限の住まいを造ることに立ち向かってできた傑作でした。しかし、それ以降建築家によって、住宅を造る社会の生産システムの基盤になるような変革はありません。変革をしないうちに、高度成長期で資本経済が優先し、いつのまにか職人達が造るマーケットはどこかへいってしまった。

「民家型構法」は、従来の生産体制に対して、伝統的な構法をシステムとして包摂することができた革新だった。明確な構法とモダンなデザイン。それは生産システムの変革であり、新しい生き方の方向を伴っていました。 
                                 平良敬一/編集者

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私が山長商店に入った15年くらい前はまだ景気が良く、流通資本がその分配を誇った時代。我々も大量に消費される重要に向け、大量生産する製材システムをつくっていました。当時は材木屋さんが木材市場で材木を競り落とし、工務店に届けるという仲介流通システムが出来上がっていたので、我々山側はそれがどんな用途で誰が使うのかの関して一切感知していませんでした。

流通システムが変化していて、工務店から民家型構法に使うという指定買いを直接お受けできます。そのとき材木の品質管理において我々にも責任が生まれ、木を扱っているという事自体は一緒ですが、木を造るという仕事の意味が大きく変わっています。
                               榎本淳一/山長商店

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現在日本の住宅の大半はハウスメーカーは造っているという状況といって間違いないと思います。あるハウスメーカー社長がそういう状況に対して「我々は素人だからできた」という発言をしています。しかし、素人であるがゆえに見逃した問題があるわけです。 例えば日本の山の問題、廃棄物の問題、木造住宅を造っていた職人体系の崩壊。

その中で民家型構法はあらゆる問題を考えられています。これで日本のハウスメーカーが積み残してきた問題をほとんど解決していけると思っています。そういう視点から民家型構法を見ていけば、単なる住宅建方のひとつということではないものだと思います。
                           戸塚元雄/木と家の会代表

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私も民家型構法を見て感銘を受けたひとりですが、当時一番強く頭に残ったのは、川上から川下までのネットワークをそれぞれの地域でもう一度繋ぎ直さなければならないということでした。私もいざ民家型構法をやってみようと図面を書き始めましたが、なかなかできないのです。乾燥材の問題、造り方の問題など、当時常識とされていたものからはまったくかけ離れていたからです。

民家型構法を実践するためには、生産者側がそれまで常識とされていたものと戦い、新たにシステムを開拓していく必要がありました。そしてそれ以上に今は、住まい手の持っている常識とも戦わなければならないのです。
                                 中村伸吾/建築家


※民家型構法とは、大工棟梁・田中文男氏と現代計画研究所によって提唱された“新木造構法”のシステム。
以下、3つの手法を基本としてこの構法は成立する。
1. 金物に頼らない伝統的木組のよる軸組架構
2. 調湿機能等の性能を最大限に活かした内外装
3. 国産材の最大限の利用

 

   
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