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神楽坂アユミギャラリーにおいて
6月「森から住宅を考える」企画展が開催された。
昨年に引き続き2回目となるこの展覧会では、
生産者・施工者・設計者が集い、住宅づくりの現場を考え直す。
まちの人は山へ、山の人はまちへ行く。
それぞれのメッセージがここに届いた。

++ 森へ行こう
++
                                       
平良敬一
一番大切なことは、やはり自然と人間との関係だと思います。私達はなぜか自然とのつき合いを絶たれています。近代化であり、産業主義であり、市場経済原理主義の暴走のせいだと思います。もう一度自然と人間との生き生きとした関係を見直さなければならない時期にきている。
森から住宅を考える」という呼びかけがあります。都会の生活の時間を少しばかり割いて、森へ行って、森とは何か、その生態に触れて、森と人間との精神的交通の回復をはかる必要があるでしょう。

木造住宅はいうまでもなく木を素材に作ったものです。木は、確かに自然かもしれませんけれど、木材は自然の断片にしか過ぎないわけで、木でできた家から自然を感じるためには想像力が働かなければなりません。木が生い立ってきた時間(歴史)への理解、木たちがどこでどのようにして生まれて、育ってきたのか、それを知らず住宅を作っているわたしたちの現実、これが問題なんです。

木造の住宅が作られる現場のプロセスを、想像力を駆使して、木材の世界から住まいの世界が出現する事態を見つめること、これも大事ですが、それはまだ抽象の世界です。あまりにも自然とわたしたちの生活は遮断されてしまっているために、干からびた抽象の世界に慣れっこになってしまった。木が育ってきた森の生活とのつながりが見えてこないのです。

かつては住宅づくりの現場も、もっと身近で活気がありました。職人たちの物づくりの情景が近くにあって、子供達もそれをみていたのですが、今は設計者の姿も職人の姿も我々の実感の世界から遠のいてしまった。
設計者も見える、職人達の姿はもっと見える、そういう現場が、職人たちの技能を磨く環境でなければならない。そういう環境を作り出す責任が、工務店や設計事務所、相互にあるわけですが、わたしたち住宅に住まう人間を、干からびた抽象の世界から生き生きとした具体、具象の世界へ連れ出す役割も担って欲しいものです。

森があって、木があって、そこから木の家が生まれる。その全体を身体感覚に浸透させ、森と人間生活のかけがえのないつながりをしっかりと身体に受け止めていくこと。住宅づくりの現場から森が見える、森で育つ木たちが見える、そういう関係性の世界を私たちの内部に再構築していくために「森へいこう!」と掲げるのであれば僕は大賛成。栗駒の「森林教室」では得る所、大でありました。

本当に森を育てること、それを維持していく持続的な営みは大変複雑な難しい事業です。今、山は悩んでいる。人間の方も悩んでいる。木材だけ見ていても山は育たない。しかし、山が衰退していくのを見れば、かえって森が勢いよく生きている姿も見えてくる。質のいい住宅を求めるなら、生のまま生きている森を見て、木の住宅の情景にある森があること、そこまで視野を広げてこそ住宅づくりは文化といえるわけで、そういう実感を広げ意識を深める運動のひとつとして「森へいこう!」というのなら本当にすばらしい。森へ行って、森の生活に浴して、もう少し野性味のある人間に近付くことも必要ではないでしょうか。

「建築家は、ただデザインすればいいというのではなくて、
デザインのバックグラウンドを考えながら
住宅を設計していかなくてはいけない時代になってきている。」 
                                 鈴木喜一/建築家
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「できるだけ地元の木を使い、地元の職人さんたちの手による、その地方らしい家をつくる。それぞれの地方が、そういうようになれば、日本の町も随分変わってくると思っています。
紀州・田辺にて、山の人・職人さんたちと一緒に、山と町をつなぐネットワークづくりを行っています。昔は、棟梁と呼ばれる人が、材料のことから設計・工事に至るまで、すべてを取り仕切っていましたが、複雑になった現代社会では、そうもいきません。だから山と町をつなぐネットワークが必要になるのです。 プレカットなど新しい技術を採り入れながら、昔からの技も大切にし、特別なものではなく、誰もが当たり前につくることのできる木造住宅を目指しています。」
                                中村伸吾/建築家
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プレカットの仕口をみせたオブジェの中に植えられた檜は、企画展のオープン当日の朝まで紀州・山長さんの山の中に生えていた。
山長林業の松本さんは「この檜は種からこの地に根をはってこれから頑張ろうとしていた、だから本当はとりたくなかった‥」
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「家を建てるまでの間、私達は家族の一員でもありますから、一緒に山へ旅行して見てもらいます。これから建主が暮らしていく場所となる家が、山の人、製材業者、工務店、大工がそれぞれ携わって、どういうプロセスを経てきできているのか。これを知ることが重要だと思います。」
        千葉弘幸 /千葉工務店
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「山へ行くようになってから、設計者という役割に対する自覚ができてきました。
材料を選ぶ時や、建主に説明をする時、
山を知っているといないでは大きく意識が異なる。 」
        末武純子/建築家


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欅遊庵をつくるとき、節のある安い木でいいと言ったのに、山の人は気を使って節のない木を出してくれました。ところが最近の若いお客さんと話していると、節の有無なんてあまり気にしていないんですよ。気にしているのは、山の人と大工さんだけのような気がする。一方で「木は割れが入ると弱くなるんじゃないか」とか「木は値段が高い」といった間違った認識を持っているお客さんが大勢います。割れが入っても強度的には問題ないし、ヒノキの無節といった特別なものでない限り木は高くない。

このように山の人の常識と町の人の常識との間には大きな溝ができているような気がします。山の人とまちの人とが気軽にコミュニケーションをとれるようになれば、溝も埋まってくると思うのですが。
     高橋正成/高棟建設工業
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シックハウスのことなどから木の安全性を考え始めたら、今まで当たり前に使っていた防カビ剤や防腐剤は使えなくなった。住まい手は歓迎してくれますが、取引先は減りました。経営的には大変だけれど、もう以前のような薬浸けの木材を出すことはできません。
                              大場隆博/くりこま杉協同組合

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私は長野県和田村で主に信州カラマツを取り扱っています。
カラマツは昔から、くるう、割れる、ねじれるといわれ、土木用にしか使われていませんでしたが、最近は乾燥方法などに工夫をして、床や壁にも使えるようになってきました。山を生かし続けていくには、みなさんに今よりもっと木を使ってもらうしか方法はありません。工業製品にはないあたたかみなど、木ならではの長所をわかってほしいのです。カラマツは節が多い材ですが、ぜひ一度、試してみてください。
                              小林保経/小林木材

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現在の日本の山の状態について簡単にいうと、杉の苗を植えるのに1ha当たり約100万円かかり、下刈りなど世話をして10年間育てるのに同じく約100万円かかります。それから間伐なども必要になりますが、50年近くかけて育てた後に伐採したとき、山に残るのはよくて50万円ほど。単純にいって200万円かけたものが50万円にしかならないわけです。
このように今の日本の山は経済的循環が成り立たなくなっている。国から補助金が出るということはありますが、それに頼るのではなく、それぞれの山が努力や工夫をしていかないと、日本の林業が生き延びることはできないでしょう。
            榎本長治/山長商店
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これまで私達が工務店や設計店や設計者、ましてや建主と会うのはまずあり得なかった。今までは市場や商社へ出荷していただけで、そこでは要望も何もなく、丸太をただ四角く切るという単純な作業の繰り返しだったわけです。今のうちの会社では市場・商社出しはほとんどゼロになっています。その家の要望に合わせて木を選び、製材を行う。社員に対しても、製材業の作業員になってしまってはいけない、みんな材木のプロになりましょうと呼び掛けています。

くりこまから出た材は、将来、使われなくなったときは、くりこまに戻してもらうシステムをつくりました。還ってきた材は燻煙乾燥の燃料などに使うので無駄にならないからです。ただしウレタンなどの化学塗料を塗られると使えなくなるので、エコ塗料を塗ってもらうようにしている。 「材木屋が何でペンキも売るのか」とよくいわれますが、資源をリサイクルするためにはどうしても必要なことなのです。   

さらに最近は無公害の洗剤も売るようになりました。シックハウス問題など、お客さんが安全に暮らせるようにと考えはじめたら、住空間の木だけでは済まなくなり、生活全般のエコロジーにまで発展せざるを得ないのです。
木材に使う防カビ剤や防腐剤は劇薬だから、もちろん人間にも害がある。シックハウスの原因のひとつともいわれています。生活する人のことを考えたら、薬浸けではなく、カビや腐朽に強い木を出したい。そこで国産材を燻煙乾燥することにしたのです。

今、山は苦しい状態が続いていますが、今回のような機会を利用し、山での新しい取り組みなど、山の話をもっと町の人に対して行いたい。そのためにも私たちは町へ出て行かざるを得ないのです。
                               大場隆博/くりこま杉協同組合

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游庵風飛来 KYOYUAN2

かさかさと 揺れる
欅の葉音が 青い空に消える
傾いた杉板に 背をあずけ
真昼に ひとり 遊ぶ庵
気が遠くなる こころ
     樽型の 部屋のなかで
     風気の夜を 過ごせば
     ひゅるひゅると 夢の呼吸
     月のあかり かすかに降りて
     NIGHT IS STILL YOUNG
ねころんで 葉っぱだけの
赤らんだ空を 見ていた 夕暮れ
板を叩いて
ジャングルの熱い風 思い浮かべる
遠きニアスの あの懐かしい宇宙
     ここに ただ座っていると
     気持ちが 少しずつ ふくらんでゆく
     ただ 生きていこうとする
     自分の輪郭線が
     くっきりと 見えてくる
小雨が 降っている
欅の木は 静けさを 保っている
窓にもたれて
ものの音を 聴いていよう
影とひかりが あらわれるまで  
                  (鈴木 喜一)

 

   
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