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第1回 
宮城県くりこまの巻

どんじゃら探検隊が結成された。

隊長は建築家の鈴木喜一氏である。旅の達人でもあるし、最近画集も出したので、画家でもあると本人は言う。
副隊長は千葉工務店の若き社長の千葉ちゃん。頭の回転がはやく、木の家に対する情熱は半端でない。もちまえのコーディネート能力で、今回の企画を含め隊長の様々な要求を実現してしまうため、森の奴隷(?)の異名を持つ。
そして最後に、某雑誌編集者のカズ。隊長と名字が同じということだけで弟と呼ばれている。昔「山をやっていた(山登りのことらしい)」と本人は言うが、森のことは素人同然である。
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さて、そんな男3人がさわやかに晴れ渡った宮城県北部くりこまの森に入ったのは、紅葉のピークを少し過ぎた11月中旬のことだった。「やっぱり山はいいなぁ」 隊長がうっすらと雪を頂く、なだらかな栗駒山を素早くスケッチしながら言う。
何やらどんじゃら隊を歓迎するかのような晴天なのだ。
まずは、くりこまの森について簡単に紹介しよう。東北新幹線くりこま高原駅から車で移動すること1時間あまり。標高1627mの栗駒山の麓に広大な森が広がる(44716ヘクタール)。その3分の2が民有林、残り3分の1が国有林で、民有林の6割は杉を主体とする人口林が占めている。
一方、国有林はだいたい山の奥地にあるのだが、近年は山の保水力を保つため、国は木をあまり切らない方針だという。保水というのは、森林がスポンジのように水を蓄えることで無差別な伐採で山の保守力が弱まると、鉄砲水などを引き起こすことになる。
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ところで、今回の探検には心強いガイドがついてくる。くりこま杉協同組合のスタッフのみなさんである。理事長の野口さんも自ら案内役に加わっていただいた。ジープに揺られながら森の中に入ったところで、「ドルとユーロの問題がね」と野口さんの口からいきなり核心をついた話が出た。

国産材が円高で、輸入材(外材)に対する競争力を失っていること、現在日本の住宅に使用される木材の8割が輸入材であること、などを手短かに説明してくれたのである。日本の輸入金額の1位は石油。2位は木材。3位は食料だという。自由化された輸入材に押されて、戦後の国産材はかなり厳しい状況に追い込まれているという。

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山道の途中でジープが止まり、降り立った探検隊は野口さんの指さす方向を見た。そこは中くらいに成長した杉の森で、地面のあちこちに伐られた杉丸太が転がっている。

間伐(かんばつ)はしたけど、山から運び出す費用が出ないんでね」千葉ちゃんが言う。「そうなんですよ。捨て間伐と呼ばれています」。間伐というのはご存知の方も多いと思うが、木の成長をよくするために成長過程で適度に間引くこと。間伐材はそれなりに利用法があるが、この場合はペイしないということなのだろう。「間伐するだけましですよ。間伐する費用すら出せない森もあります。同じ体質で比較すると、杉は大根より安いんです。何十年もかかって育てられた杉が、です‥」と野口さん。

「うーん、これが日本の森の現状なんですね」と15分前までピクニック気分だったカズも真顔で呟く。「木は再生可能な資源だけど、手間とお金をかけないと森は再生されない。国産材がダメだと日本の森もダメになる図式かあ。」

実際には森を愛している林業家がくりこまにもちゃんといて、丁寧に手を掛けて次世代に森を残す努力をしている、という話に探検隊もホッと救われた気持ちだった。さらに、くりこま杉協同組合では昔ながらの燻煙木材に着目し、新しい燻煙乾燥技術を開発。単なる外材との価格競争ではなく、付加価値による国産材の普及にとりくんでいるという。
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その後、気分を変えるように、探検隊を乗せたジープはブナの原生林に向かった。栗駒山がますます近くなってくる。「あと1ヶ月もすると積雪期に入り、この道路は閉鎖されます」ジープを運転するスタッフが教えてくれた。
すでに山道を行く車の数もかなりまばらだ。

しばらく行くと、車道から反れて一段と急な山道にジープは入っていく。ぬかるみでもジープは訳なく進んで行く。周辺一帯には樹齢150年というブナの原生林が静かに広がっている。探検隊は頂上付近でジープを下り、幻想的なブナの森に足を踏み入れる。

「杉やヒノキなどの針葉樹と違い、ブナなどの広葉樹は自然に種が落ちて、放っておいても育っていくんですよ」とスタッフの一人が説明してくれる。「あっ、ねずこだあ」千葉ちゃんが山の斜面を指差して叫んだ。ねずこにはヒノキに似た針葉樹で、幻の木と呼ばれるくらい珍しいという。隊長はブナの原生林で熱心にスケッチをしている。

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遅い昼食を取った後、探検隊は再び杉の森に入った。手入れの行き届いた90年生(植林してからの年数をあらわす表現)の森では、間伐した後に苗木を植えた複層林や、日当たりを効果的に得るために、数メートル幅で帯状に間伐した列状間伐など新しい試みを見学する。松の木を伐採する現場にも遭遇した。木が伐採されるのはあっという間のできごとであった。

山の斜面に30cmほどの杉の苗木がたくさん植えられている場所も訪れた。「こうやって森は再生されていくのかあ。でもこれが大きくなるまでには何十年もかかるんだよなあ」カズが再生される森のサイクルの長さに思いを馳せているうちに、あたりは次第に夕日で赤く染まりはじめていた。気がつくと、もう一日も暮れかけている。

「いろいろな森や木があるというのを見れてよかった。杉の植林地もあればブナの原生林もある。日当たりが良く育ちのいい木もあれば、そうでないのもいる。やっぱり山はいい」夕日を受けながら隊長が言った。
その夜、気仙沼の漁師が森に木を植えているという話を、くりこまのスタッフが探検隊に語った。きれいな海はきれいな森や山から生まれるのだそうだ。自然界は常に密接につながっていることが興味深い。

山と町の交流から生まれるもの
                     ( くりこま杉協同組合 専務理事 大場隆博 )

くりこま杉協同組合は、宮城県北部のくりこま山麗で算出される豊富な杉材の有効利用と、林業の活性化、若い労働力の確保などを目的に、平成2年に設立されました。壁の内部に使われる下地材(羽柄材/はがらざい)が主力商品で、外材に負けない高精度な建築資材を生産し、低迷する林業の復活に大いに闘志を燃やしていました。しかし、いくら良い精度の製品を作っても結局は外材との熾烈な価格競争に巻き込まれ、復活するどころか減退するばかりでした。

そんなとき、当時まだあまり騒がれていなかったシックハウスの話を聞く機会があり、本当に重要なことは、ユーザーの立場に立ち、廃棄時まで考えたエコロジーな商品づくりをすることだと気づきました。それこそが、本当の意味での付加価値商品となり、低迷する林業の復活につながると考えたのです。
その後、「エコウッド」という名前で床、壁、天井の内装材の生産を開始。
安全な材料に加えて自然塗料も扱うようになり、今ではドイツの自然塗料と自社開発の「エコウッドカラー」を取扱い、販売しています。

平成12年からは、日本古来から伝わる燻煙乾燥による乾燥木材の生産を開始しました。木材の乾燥はカビや割れを防ぐ重要な作業ですが(戦前は天日乾しが普通に行われていた)、同時に煙で木材を燻す技術を現代に復活させたものです。内装材はもちろんのこと、建具など、住宅にかかわるあらゆる分野で商品開発を行っています。

現在も木材の価格は低迷を続け、業界紙には毎日同業者の倒産記事がまるで連続小説のように連載されています。昨年から私達は山を飛び出し積極的に町へ出るようになりました。町の人々が何を望み、何を求めているのか話し合いました。また、町の人たちを積極的に山に誘いました。それにより新たな信頼関係が育まれるようになりました。
これは従来の私たちでは考えられなかったことです。本当の意味での林業の活性化は、林業に携わる私たちが、積極的に町に出ることから始まり、ユーザーや建築家は山に足を運ぶことから始まるのではないかと思います。

 

   
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