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再築可能な
国産木造の架構体を考える
欅游庵の試みとその意味
鈴木喜一
  この5年、毎年一度、神楽坂アユミギャラリーで「森から住宅を考える」という企画展を仲間達と一緒に楽しく開催している。その大きなシンボルとして、欅游庵という木造の架構体を4度出現させている。中庭の欅の木を囲んで、その架構体はいつも作られるのだが、実は単なる象徴として存在しているのではなく、僕たちはこれにある意味と切なる願いをこめている。
伝統的技術の再発見
  ある意味と切なる願いとは、
一つ・都会に森を!(山とまちをつなぐ)
二つ・日本の山を守り、木造住宅をつくろう!(いまこそ国産材を使おう)
三つ・伝統的技術の再発見
ということである。
  2005年の欅游庵でとりわけ強調したのは、三つ目の伝統的技術の再発見ということだった。架構体はいずれも解体可能なように、そして再築可能なように考えていった。つまり、金物を使わずに木で木を留める仕口を手刻みでつくっていったのである。建て方も解体もクレーンは使わずに、みんなで力をあわせて建て、そして解いた。当たり前といえば当たり前の行為だが、その当たり前の風景が建築の現場から消えようとしているのが今という時代なのではないか。
再築可能な骨組み
 

神楽坂アユミギャラリーと新宿オゾンを結んで、欅游庵2005の一連の作業は進められた。
(1)山で製材(紀州山長・くりこま杉)
(2)まちの工務店で大工による手刻み
(3)神楽坂アユミギャラリーで建て方・設置
(4)解体
(5)新宿オゾンで再構築・設置
(6)解体
(7)群馬で再構築予定

欅游庵2005 は三たび、場所をかえて再築されることになったのである。小さな木造の骨組みを繰り返し使用するというこの試みは「建てては壊し、壊しては建てる」といったスクラップ&ビルドに警鐘を鳴らすものである。
もう、あるものは壊さない」という持続可能で資源循環型の社会を真剣に模索しなければならない時代なのである。
日本の木造住宅にも新しい価値観が必要になってきたが、実は過去を振り返れば鮮やかに未来が見えてくるのである。
「手刻み」「日本の木で」「みんなで力をあわせて」これを謙虚に見つめてみよう。
ここにひとつの真実があるのではないだろうか。

長い時間軸
  壊さないという新しい視点に、つくる側も目覚めれば、ここに歴史という時間軸が生まれる。
まちも建築も生活もやはり長い時間軸が必要だ。それはある種の豊かさ、人生の奥深さに通じるものだと僕は確信している。
世界はいま同時刻に様々な方向を向いて疾走している。長い時間軸で捉えてみたら空転していると見える動きも少なくない。足元の大地を踏みしめながらゆっくり歩いていくことが実は確実な一歩なのだという視点の刷新が大切な時かもしれない。
                                         (鈴木 喜一)
【 1. 神楽坂アユミギャラリーでの建方 】
解説:千葉弘幸/高橋正成
  毎年恒例の欅游庵の建方は、既存樹木や枝葉のため、クレーンが使えず手順も変則的である。今回欅游庵2005は、建方と解体がもう1回あるので、栓を鼻栓にし、柱の柄穴の変形を防ぎつつ解体を容易にした。
(1)倒したまま通し柱に胴差と桁を差込み、 門型にしてから起こし上げる。
(2)土台の接合/片方を長くして横柄や蟻柄にするのではなく、渡り腮の要領で相欠き接合にした。
(3)直交するふたつの土台に柄を挿し込む/通常柄の断面形状は土台長手方向に平行な長方形だが、今回は重柄とし、上側の土台には長方形、下側の土台には正方形の柄が挿し込まれるようにした。
(4)まず、一つ門型を起こし、そこに1本の柱に胴差と桁を接合したF字型を直交方向に繋ぐ。
(5)柱と横架材(胴差)の接合
(6)(7)(8)柱と横架材(胴差)の接合/ニ方向から直交する柄がぶつからぬよう、柄が交差する部分から先は、柄の位置が上と下に分かれる。
【 2. 新宿・OZONEの会場にて再築 】
  高層ビル内なので、神楽坂同様、人力のみによる。
土台(と柱1本)は別のものを用いるため、神楽坂での解体時、柱を取り付けたまま土台の端部を切断、運搬時柄の養生としたので、2回目の解体後も柄や仕口はほとんど痛まなかった。
(1)柱と桁、胴差しを接合。起こして土台に落とし込む。
(2)オープン当初。柱を四方から縄で引っ張り、転倒を防いだ。
(3)(5)門型と門型を向かい合わせで起こし、横架材で繋ぐ。柱勝治の小根柄差し鼻栓打ちで接合時は本来の柱間の距離より柱を開くため、柱と横架材の接合後に土台を差し込む。
(4)片方の柱は、既に土台に取り付けた状態でで2本の柱に横架材を接合するため、もう一方の柱は土台に取り付けず、柱間の感覚を開け易くした。
(3)(5)門型と門型を向かい合わせで起こし、横架材で繋ぐ。柱勝治の小根柄差し鼻栓打ちで接合時は本来の柱間の距離より柱を開くため、柱と横架材の接合後に土台を差し込む。
(6)柱に一方の胴差の取り付け後、もう一方の柄と鼻栓の位置を確認する。
(7)柄に残る土台端部を外し、土台に落とし込む。
(8)ついに完成。
組み立て、
解体のノウハウ
千葉弘幸
 

今年の欅游庵の構想は、住宅建築創刊30周年記念イベント『みんなでつくる家』展の打合せと同時に始まった。その模型を見たときに「これは塔だな」と思った。そう、お祭りの真ん中にあるような櫓(やぐら)でもある。この「塔」を庭の欅に絡ませることになる。当然ステージのように上がれるところもほしくなる。

 

そこで、構造的には土台、胴差、桁に拠る通常の2階建ての構造体とした。
ただし、OZONEに展示する場合もあるので、柱の長さは5mを限度とし、そのため土台〜胴差し天端間で2080mm、胴差し桁天端間で2400mmとした。
塔のイメージが強いため柱がちとして、柱のてっぺんはのばして納めた。

 

また、模型では柱が四方転びしていて、かつテーパーがかかっていたが、これは、柱の先が内側に倒れかつ細くなることによってそびえたつイメージにしたかったためだ。ただし、四方転びで行うと刻み人工が約5倍になるとのことで断念し、代わりにテーパーはかけることにした。
根本は6寸で、末で4寸。しかし、この柱(檜材)に背割りが入っていたため、実際には4.5寸の大きさとなっている。

 

また、梁に関しては、よく民家型構法と呼ばれるものに倣って、柱に対して小根ホゾ差し鼻栓打ちとしたが、このことにより胴差、桁ともに開いて閉じる建方となり、第1回目の建て方では大変苦労をした。
なぜなら土台の柱間が9尺に対して、梁の総長さが3117mmとなっており、土台にはめた柱に針を差し込もうとすれば525mm柱を開かなくてはならない。これほど開くのは無理なので、先に柱に対して梁を差込み、引き上げてから土台に柱を差込むこととした。土台部分に関しても、相欠き継ぎとして、柱は重ホゾとして柱のブレもなくしている。

 

このような構造としたことによって、組み立て〜解体の繰り返し作業を可能とした。
金物ではビスのあとがでるし、込栓ではいちいち材を取替えないといけなくなる。結果としては組み立て、解体の作業をもう2度行っているが、特に構造的に問題は起こっていない。

 

今回の欅游庵2005は、レッカーが使えないことによって、結果的に昔ながらの建て方となった。そのためかなりの重労働となったが、昔の大工が行っていたものが少し見えてきた。
また、現代の建方はレッカーなどの重機に支えられ、かなり安全かつ効率よく作業が出来るようになっている。
木造住宅も日々進化しているのである。





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